「たまたま」出演者、中田顕史郎さんにインタビュー!

『たまたま』出演者インタビュー、今回は中田顕史郎さんです。一度見たら忘れられない強い存在感を漂わせる中田さんは、ミナモザをはじめとする瀬戸山美咲作品の常連。出演者としてだけでなくドラマターグとして創作面に深く関わり、瀬戸山作品に欠かせない右腕的な人物となっています。

 

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1966年生まれ。神戸市出身。解散した劇団「青空美人」の看板俳優。現在はフリー。近年はミナモザ、空想組曲DULL-COLORED POP、鵺的などに出演。2016年度の「サンモールスタジオ年間最優秀男優賞」を受賞した。また1990年頃からコンテンポラリーダンス作品のドラマターグを担当し、近年は演劇作品のドラマターグも多数担当。中でも、ミナモザの瀬戸山美咲とつくる作品は、岸田戯曲賞読売演劇大賞にノミネートされている。

 

 

―この芝居の前に多摩センター/多摩ニュータウンにいらっしゃったことは?

 

まだ二十代の頃、そごう(*)とかあの辺がオープンした時代ですね。バブルですからイベントとかよくやっていたんです。屋上で○○ショーみたいな。その設営のバイトで行ったのを覚えてますね。一番最初はその時だと思います。バイト代は、1日で8000円とか1万円とか、そんなもんじゃなかったかな。

(* 多摩そごうは1989年開店/2000年閉店。その建物が現在のココリアに受け継がれている)

 

 

―するとそれは20世紀の話ですね。では久しぶりにいらっしゃって、どんな感じですか?

 

う~ん…駅からパルテノン多摩までのズーンとした道、「パルテノン」というネーミングのセンスと相まって、人工的な印象、そしてちょっと浮かれている印象を覚えます。僕は故郷が神戸ですから、ニュータウンと言うと千里(*)になるんですよ。でも千里とは、やはりだいぶ違う印象ですね。

(* 大阪の吹田市豊中市にまたがるニュータウン。建設時期は多摩ニュータウンよりも約10年早いため、多摩の都市計画にも大きな影響を与えたとされる)

 

 

―それはどんな風に違いますか?

 

今回ワークショップで(多摩ニュータウンを)歩いたりしてよけい思ったんですけれど、やはりすごく計画的に作られているんです。千里の方が、あまり綿密な計画性無しにどんどん住宅を作っているのとはだいぶ違います。まあ千里も、今また変わり始めてるんですけど… 

ともかく多摩は、緑豊かだけれど人工的に作られている印象ですね。今回の脚本にも出てくるんですけど、開発の時、一回緑を全部引っこ抜いて、更地にして、それからわざわざ木を植えている。決して悪い意味ではなく、とにかく「計画されている」ということを感じさせます。電柱も無いし、車は走ってない。やはり意図しないと、ああいう風景にはならないわけで、歩いてみると、それが体感出来ますね。コンビニ少ない、自動販売機も少ない…(*) 

他の、駅を中心にダラッと成るように成った町とか、電鉄会社中心に開発された町とは違う。昔で言う公団住宅の町、高島平なんかとも違う。同潤会系とも違うし、最近の光が丘とか豊洲とか、ああいうところとも全然違う。

高度経済成長に突入する手前の、ある種の理想というか「こういう良い町を作ろうよ」というのも感じられる。そして「昼間はオトンは働きにいくものでしょ」という時代の、オカンと子どものベッドタウンという性格…その2つを凄く感じます。だから「生産する場所」があまり無いんですよね。消費する場所も、実はそんなに無いし、意外と珍しい場所なんじゃないかなという気がしました。

(* 住人として念のため注釈しておきますと、これは多摩中央公園を中心とした歩車分離が整備された地区の話で、そこを少しでも離れると車と歩行者が入り交じった道も多く、逆にそういうところは200mごとにコンビニがあったりします。完全に計画された部分以外は、意外とダラッとしています(笑)

 

 

―中田さんは、この作品ではどんな役柄なんでしょうか?

 

残念ながら、僕ととみやまさんの役は、まだ本が書かれていないので…(*)

(* このインタビューが行われたのは7月21日。その後完成した台本を読むと、中田さんととみやまあゆみさんの二人による大きな見せ場があります)

 

 

―ああっ! そうなんですか(笑)。

 

みんな何役かを兼ねますけど、いわゆる本当の役(メインになる役)は、僕たちはまだなんですよ。今 役柄表で予告されているもので言うと、僕は団塊の世代を象徴するような人物ですね。

 

 

―では最後に、この作品にいらっしゃるお客さんに向けて何かメッセージなど。

 

最初は、多摩の方々の証言、多摩のいろいろな事象、それらを元にしたドキュメンタリータッチの作品になるだろうと思っていたんです。でもその一方で、2時間のお芝居を楽しく見て欲しいという部分もあり…多摩に住んでらっしゃる人が見に来て、「おぉっ!」とか「ああ、なるほど」とか「あるある!」とか「住んでいたけど、そこは気がつかなかったな」とか…そんな風に楽しんで欲しいと思いながら作っています。そのために、ドキュメンタリータッチだけでは終わらない1つの大きな仕掛けを、作品の軸として用意しています。その仕掛けに加え、「これは多摩のこの辺の話かな?」とか「60年くらい前の話かな?ここは今の話だな」とか考えながら見ていただくと、楽しめるんじゃないかと思います。

また、多摩以外のお客さんには、多摩ニュータウンに対して抱いているイメージを引っ繰り返すような効果があるかもしれません。でもそういう事にとどまらず、「生きる」とか「町を作る」とか、「自分が住んでる町が好きなんだけど、ああいう気持ちって何なんだろう」とか〈町と私〉みたいなものを、もう一度考えるきっかけになるかな、と。そこには「家族」とか「人への思い」みたいなものが必ず含まれるはずで、そういう部分に触れられるような芝居として作っています。

 

 

 

 

 

 

★実は中田さんには、このインタビューの途中で「ドラマターグの役割」に関する話を伺っています。しかしそれが非常に長く(今回掲載した分とほぼ同じヴォリューム)、多摩ニュータウンや『たまたま』という作品に直接関係する内容でもないため、一度切り離すことにしました。そちらはインタビューの「番外編」のような形で、また後日掲載したいと思います。ひょっとすると上演が終わってからになってしまう可能性もありますが、演劇の創作や組織論に関する興味深い話題が盛り込まれていますので、どうぞお楽しみに!

 

 

 

 

市民スタッフのマサトでした。

 

 

 

《公演情報》 多摩ニュータウン×演劇プロジェクト「たまたま」

 

84日(金) 1930分開演

85日(土) 14時開演/19時開演

86日(日) 14時開演 

 

上演時間:2時間予定 パルテノン多摩 小ホール

 

http://www.parthenon.or.jp/act/2996.html

 

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