稽古場リポート 7月8日(土)

7月8日(土)、初めて稽古場を見学させていただきました。稽古自体は、3日(月)に顔合わせ的なものから始まっているので、この日で6日目になります。

 

場所は小田急線の駅に近い某所。稽古開始は18時からですが、私が伺ったのはちょうど19時30分。中に入ってみると、皆さんが四角に並んだ机を囲み、真剣に台本の読み合わせをしている最中でした。しかしどうも様子がおかしい。しばらく聞いていても、まったく多摩ニュータウンの話には思えず、「何故そこが?」と思うような地名ばかり出てくるのです。

やがてそれがワークショップで出たあるエピソードを発展させたものだと分かりました。多摩ニュータウンに直接は関係しないエピソードなので少し驚きましたが、この話が全体の中でどのようなポジションを占め、どのように全体のテーマと絡んでくるか楽しみです。

 

f:id:tamatamatama2017:20170712005628j:plain

 

 

私が入ってきてから台本を読んでいた時間は、10分かせいぜい15分。その後は、今読んだ内容に基づくディスカッションが延々と続きました。と言っても、台本の内容そのものを深く掘り下げるというよりは、そこに書かれていたエピソードをきっかけに自分の考えや思い出を自由に話している感じ。多摩ニュータウンに関する話はまったく出てきません(笑)。

 

最初のうちは比較的台本の内容に沿った話題なので、かなりシリアスなもの(ネタバレになるので具体的には話せません!)。そこから話題は子どもの教育に移ります。ここでは、まだ小さなお子さんのいらっしゃる中田顕史郎さんと町田マリーさんの2人が、自らの子育てエピソードや教育観などを話し、会話の中心に位置していました。子育て経験の無い若い人たちはそれを神妙に聞いている場面が多いのですが、頭の中で自分と親との関係を思い出しながら、1つ1つの話を自身の体験に照らし合わせ、真剣に内容を吟味しているように見受けられます。

個人的に印象に残ったのは「子どもというものは、ここぞという時にかぎって熱を出したり怪我をしたりする。あれは親が全ての関心を仕事に集中させようとすると、その関心を自分の方に引き戻したくて(無意識に)やっているのではないか」という話。まさに「あるある」ですね。「子どもはトリックスター」というのは、この日一番の名言だったように思います。

 

f:id:tamatamatama2017:20170712005718j:plain

 

子どもの教育話から発展して、最後の1時間は何と延々クリスマスの話! もはや多摩はおろか、この日読んでいた台本ともほとんど関係ありません(笑)。サンタクロースを何歳頃まで信じていたか、子どもにサンタはいないとカミングアウトするはどのタイミングが適切か、プレゼントは何をどのように渡せばいいのか、あまり小さい内にサンタはいないと教えると友達の間で仲間はずれにされるのではないか…などなど話の種は尽きません。子育て論では聞き役に回りがちだった若い人たちも「自分の場合は…」と様々な思い出を語り出します。

一番おかしかったのは、「サンタさんなどいない。あれは全部パパやママが買ったものだ」といきなり言うと衝撃が大きいので、「サンタさんとお話をして、今年からはパパがサンタさんの代理としてお前にプレゼントをあげることになった」と言った話。最近の親って本当に子どもに優しいんだな~と感心。自分の場合を振り返ってみると、親がそんなことには全く無頓着だったので、物心ついたときからサンタクロースなど実在しないと教えられていたような気が…いや、我が家が特別だっただけかもしれませんが。

 

最初の方はかなりシリアスな話だったし、子どもの教育に関する話も、当然明るい話ばかりではないのに、どういうわけか終始笑いが絶えなかったのが何よりも印象的でした。シリアスな話もあまり深刻になりすぎず面白可笑しく聞かせてしまうあたり、役者陣の話術やコミュニケーション能力の高さが伺えます。

 

印象的と言えば、一つ気がついたのは、足元が皆てんでバラバラなこと。裸足、靴下、自分用の床履き、備え付けのスリッパ、そして中田さんに至っては珍しい足指出し靴下! 指出しの手袋は珍しくないけど、指出しの靴下って初めて見た… 同じ場所に集うのに、何故ここまで足元が違うのでしょう。このバラエティ豊かな足元に、役者という人たちの自由さを見た思いがしました。

 

f:id:tamatamatama2017:20170714183611j:plain

 

この日は美術打合せがあるとのことで教育座談会…もとい、芝居の稽古は21時半で終了。役者陣は、特に連れだって飲みに行く風でもなく、3つの駅に向かって三々五々散らばっていきました。考えてみると、アルコールも無しに2時間近く延々とあのような会話を続ける集中力というのも凄いもの。この人たちには、今更酒を飲みながらの談笑など必要ないのかもしれません。

 

 

芝居の稽古と言うよりは、ある意味ただの雑談に近い2時間でしたが、このようなお喋りを通じて、互いの人柄や考え方を知り、役者相互間の「気」を練り上げているのでしょう。ワークショップで最初に結構な時間をかけて行われるゲームと同じ役割です。また瀬戸山美咲さんは、それらの会話の中から、常に台本のアイデアを拾い上げようとしているはず。もし最終的な台本にクリスマスのエピソードが盛り込まれていたら、それはこの日の会話から生まれたものだと思ってください(笑)。

 

しばらくはこのような状態が続くようですので、次の稽古場訪問は、立ち稽古が始まってからになります。その頃には台本もより完成型に近づいているはず。5回に及んだワークショップや今日の話から、何が取り上げられ、どのように組み合わされ、どれほど磨き上げられていることか、期待が高まります。

 

 

 

リポーターは市民スタッフのマサトでした。

 

 

《公演情報》 多摩ニュータウン×演劇プロジェクト「たまたま」

 

8月4日(金) 19時30分開演 

8月5日(土) 14時開演/19時開演 

8月6日(日) 14時開演 ※上演時間:2時間予定 パルテノン多摩 小ホール 

 

http://www.parthenon.or.jp/act/2996.html

 

 

 

twitter

 

https://twitter.com/tamatama201708