『たまたま』ワークショップ最終回!
こんにちは!第1回目のレポートを書いた市民スタッフFです。
あれから1ヶ月と少し、いよいよワークショップも最終回を迎え、これまで各チームで作り上げてきた“多摩ニュータウン”をテーマにしたお芝居の発表会を行いました!
この日はいつもより1時間会場を開ける時間を早め、本番へ向けての自主連練の時間となりました。
その後、通し稽古を実施する流れに。
「たまたま」作・演出の瀬戸山美咲さんから、オープニングと作品ごとの繋ぎの部分、エンディングの演出を参加者全員で受けます。
通し稽古を終え、瀬戸山さんから各チーム個別にアドバイスを伝え、観に来てくださったお客さまにも入っていただき、
いざ、多摩ニュータウンの4つの物語の開演です…!
■オープニング
道行く多摩の人たち。最初は知らない者同士だったけれど、徐々にアイコンタクトや会釈をしたり、ハイタッチを交わしたり、交流が生れていきます。
だんだん人が掃けてゆき、そのまま、【愛宕チーム】の発表に移ります。
■愛宕チーム
多摩モノレールが印象的なこちらの作品は、若い夫婦が多摩センターに物件を探しにくるところから始まります。
真ん中にいるのは、多摩センターでNO.1の不動産屋さん。
不動産屋さんかと思いきや、急にギャングの子分に豹変!!
ええっ、多摩って安全でクリーンな街じゃなかったの!??
なんて、不動産屋さんのちょっとしたおちゃめ心です。
実際に不動産屋役の浅井要美さん(「たまたま」にもご出演されます)は、先日出演された舞台で15年前に多摩センターのイトーヨーカドーで買ったこのオレンジ色のトレンチコートを着て、ギャングの子分の役を演じられたのだそうです。
鮮やかな色がお似合いです!
不動作屋さんに導かれて、愛宕の街を訪れる若い夫婦。
そこで、愛宕在住のまゆみさんとばったり道で会います。
「あら~!偶然!どうしたの~~??」再会を喜ぶお二人。
まゆみさんが、愛宕のとっておきの秘密スポットを案内してくれることに。
石のステージや、多摩の名水、ホオノキなど、実際に愛宕の街歩きで見てきた風景をふんだんに取り入れた構成になっていました。
人を選んで出たり出なかったりする「多摩の名水」。心のキレイな人しか乗れない筋斗雲のよう…(笑)
とってもかわいい演出で、このシーンは毎回観るのがたのしみでした!
ホオノキの葉っぱも素敵な小道具に。
そして再び多摩センターの不動産屋さんに戻ってきた若夫婦ふたり。
どうやら、この街を気に入ったようです。
果たして二人は、多摩に引っ越してくるのでしょうか……?
若夫婦ふたりと共に、観ている私たちも一緒に街を案内してもらったような気持ちになりました。
そして「街歩き」や「思い出の一品語り」など、ワークショップで実際に体験したことやエピソードをしっかり物語に活かし、【ワークショップの集大成】のような構成になっていたのがとても素敵でした!
■ぽんぽこチーム
続いて、ぽんぽこチーム。
初老の夫婦の会話から始まります。
「今日は父の日だっていうのに、息子は連絡ひとつよこさない」と愚痴るお父さん。
そんなお父さんが、ひょんなことから唐木田へ行くことに。
車掌さん「次は~終点~唐木田~~」(車掌の声、名演技!)
今日も唐木田駅前の女人像は美しい(3回目)
ん?たぬき??にわとり??ヤギもいるし…ここはどこ??
気が付けばお父さん、300年前の多摩にタイムスリップしてました!
300年前の多摩ファミリーの一家団欒の中へ。
お母さん「今日はおかずがあります!」
梅が出てきますが、子供たちは「こんなのやだ!肉が食べたい!!」と猛抗議。
そこへ厳しいお父さんが一喝。
「江戸時代に肉は食わねぇだ!!」
この名台詞に会場も笑に包まれました。
妙に人懐っこいたぬき。
そこへお父さんの携帯が鳴ります。
「父さん?俺だけど。今日父の日だからさ、晩飯でもごちそうしようと思って」
息子、父の日覚えてた!
お父さん「今、300年前の唐木田にいてさぁ」
息子「300年前??父さん何言ってんの?狸にでも化かされたんじゃない?(笑)」
たぬきに化かされたお父さん、息子の電話により、無事300年前の多摩から現代に戻っていけたようです。
数年後、亡くなった父を偲び、息子夫婦が唐木田へ訪れます。
「このあたりは『平成狸合戦ぽんぽこ』の舞台になった街らしいよ」
例のすぐ赤信号に変わってしまう唐木田名物の信号、駆け足で渡ったら、男性が派手に転んでしまいました!
「大丈夫ですか!?」
座りこんだまま、急に多摩の昔話を始める男性。
「話すのかよ!しかも雑談長ぇ…!!」と思わず心の中で突っ込まずにはいられませんでしたが、このシーンでもギャラリーの爆笑をかっさらっていました(笑)
瀬戸山さんもクリティカルヒットのご様子!
「300年後の唐木田にも、この銅像残っているのかなぁ」
遠い未来の街を想像させながら、物語は幕を閉じました。
街歩きで見た古民家の展示や体験したエピソード(梅は実際に街歩きのときに梅林で出会った多摩の人にいただいたのだそう)、そして多摩の歴史の話を盛り込みつつ、それらを活かした日常の中のSF具合が“「世にも奇妙な物語」の多摩版”といった感じで、魅力的な作品に仕上がっていました!
唐木田の女人像に「キレイだな~」と見惚れる一人の青年。
照れる女人像がまたキュートです。
そして物語は【亡命チーム】に引き継がれます。
■亡命チーム
主人公の青年、名前は「ダニエル」。(どこかで聞いたことある名前…)
ダニエル「僕は地元が大きらい!」
いきなり地元のディスりから始まるの青年の主張。まあ、聞こうではないか。
「僕の地元の若者の就職先は米軍か自衛隊ばかりだし、車中心社会で歩車分離も整備されてなく、戸建てが密集してプライバシーもない。いくらでも文句が言える!!」
そんなダニエルくんも例にもれず、軍に入隊。
鬼軍曹のもとで過酷な訓練を受ける日々に耐えかねて、ついに逃亡…!
鬼軍曹、めっちゃ怖い。
この鬼軍曹VSダニエルの一騎打ちは、通し稽古のときよりさらに激しい攻防になっていて気迫がありました!
決死の逃亡を経て、多摩ニュータウンに亡命してきたダニエルくん。
ヒヨドリさんが多摩の街を案内してくれます。
そしてこちら、突如現れた多摩のヴィーナス?妖精??縄文時代中期の土偶さんです(from縄文の村)
※彼女の姿は観客にしか見えません
多摩に住みたいダニエルくん、団地の抽選会に参加します。
多摩の妖精さんの素敵ないたずらにより、何回も応募している強豪ライバルを押しのけ、見事当選!
そして団地でピアノを教えているキティ先生と運命の出会いを果たします…!
キティとダニエルが出会ったーー!(ダニエルくん、キティ先生に一目惚れ)
ダニエルくん「多摩ニュータウンは歩車分離されていて安全で空も広くてとってもいい街だね!」
キティ先生も、ダニエルくんによって多摩の街の良さを再確認することができた様子。
そんないい感じの二人のところへ、なんと「亡命してきた者をこの団地に住まわせるわけにはいかない!」と行政から告げられてしまうダニエルくん。
そんな…!せっかく多摩の街に住めてキティ先生にも出会えたのに……。
ダニエルくん、どうなっちゃうの!?
キティ先生「わたし、この人と結婚するんです!」
ダニエルくん「えっ!!!」
「結婚するなら、まあ、いいでしょう」ということで、(案外あっさり許された!笑)
キティ先生の助け舟で、ダニエルくん、無事に多摩に住み続けられることになりました!やったーー!
そして改めて、ダニエルくんの方から改めてキティ先生にプロポーズ!
「最初から決めていました!僕と結婚してください!」
見事、住みたい街も愛する人も手に入れたダニエル青年。
キティ先生と、多摩ニュータウンで末永くお幸せに…!
エンターテイメント性に溢れた、とっても楽しい作品に仕上がった【亡命チーム】。
また、このチームは唯一実際に多摩の団地の中を見学できたそうで、その体験もしっかり物語に活かされていました。
そしてダニエル青年から見えた「多摩ニュータウン」という視点がユニークで、多摩の良さを改めて知ることができました!
■街づくりチーム
男性と女性が“多摩トーク”を始めるところから物語はスタート。
「カリヨン館」の小さな映画館、「そごう」にあったからくり時計など、今はなき多摩の姿を思い出させてくれるなつかしいワードが。
男性「学生とか、若者が買える服屋がなくて」
(わかるわ~~!私もかつてそんな不満を持っていた若者の一人でした)
そんな様々な“多摩コンプレックス”を抱えたことがある人には、とっても共感できる会話が続きます。
人が入れ替わり、今度は男性が話し始めます。
「“何もない街”のようでいて、スタバや大型書店丸善があったり、パルテノン多摩も含めて文化的水準の高い街だよね」、となかなか高評価。
“稲田堤の乗り換えの距離は果たして乗り換えと言えるのか問題”(笑)
にも触れられていました。
中学生のときに合唱コンクールでパルテノン多摩で歌ったことがある思いでを語る女性。
そうそう、朝早く来て大階段にみんなで並んで練習するんですよね。
わたしも中学の3年間は毎年合唱コンクールでお世話になっていました!
あの光景は、今でも続いているのでしょうか。
登場する人が入れ替わるごとに出来上がっていく多摩の街もみどころです。
小道具を使いながら、多摩の街の説明も。
女の子が持っている白い箱は、かつて存在した「ペンタくん」(住宅展示場)。あったなぁ…。
彼女が何気なく言った、「人工的に作られていない街なんてないのに」
という台詞にハッとさせられました。
街づくりチームはその名の通り、段ボールや紙を使って多摩の街を作りあげていく様子が印象的な作品で、会話形式で進む物語も、「多摩ってこういう街なんだ」とわかりやすく観る側にも伝わってきました。まさに“多摩センター”を描いた作品。
こちらのチームは参加できる人が固定できない、という難しい問題がありこのようなスタイルになったそうですが、演劇的構成が美しい作品に仕上がっていました!
■エンディング
最後の街づくりチームが作りあげた“街”に、再び人が集まってきます。
出演者全員が多摩の街を歩き、交差し、ゆっくり座ります。
そして全員でお辞儀をして、幕を閉じました。
ブラボー!拍手!!
4チームそれぞれの個性や視点が光る“多摩ニュータウン四連作”に仕上がっていて、この街で生まれ育った者として、こんな観劇体験ができるなんて、なんて幸せなことだろう、と思いながら参加者のみなさんの創意・工夫、熱演に心を打たれました。
こんな短期間、短時間でひとつの演劇作品を作り上げるなんて、なかなかできることではないと思います。
最後に、ギャラリーの方も交えて一人ずつ感想を。
瀬戸山さんが「このワークショップは1回で終わらせず、ぜひ続けていってほしいです」と仰っていましたが、私もぜひ継続して続けていってほしいな、と思いました。
多摩に住んでいる人、またかつて多摩に住んでいた人、そして多摩とは全く所縁のない人、様々な立場の方が参加して、「演劇」を通してひとつの“街”について考えるのはとてもクリエイティビティな活動だと思いますし、これからもまた違った視点で街を捉えなおすことができる可能性を感じました。
そして改めて参加者の方それぞれの“故郷”についても考えるいいきっかけになるのではないでしょうか。
私自身、この1か月間は毎週末に演劇愛を携えて多摩センターに里帰ることがほんとうに楽しみでした。
また、ワークショップを通して素敵な方々と出会えたことも、とってもうれしかったです。
なので、終わってしまった今、とても寂しく感じております。(完全に多摩ロスです!)
この体験を8月の本公演「たまたま」に向けてスタッフワークでも活かしていけたらと思っています。
ワークショップ参加者の全てのみなさま、1ヶ月間ありがとうございました!
そしてお疲れさまでした!!
また“多摩”でお会いしましょう…!
《公演情報》 多摩ニュータウン×演劇プロジェクト「たまたま」
8月4日(金) 19時30分開演
8月5日(土) 14時開演/19時開演
8月6日(日) 14時開演 ※上演時間:2時間予定 パルテノン多摩 小ホール
http://www.parthenon.or.jp/act/2996.html
https://twitter.com/tamatama201708